事例1 鎌倉育ちの家探し(その3)

リビンングは天井を抜き、白塗装。渋い床が映えます。

リビンングは天井を抜き、白塗装。奥に見えるダイニングの壁はお客様にょる塗装。渋い床が映えます。

34年ぶりに現れた小屋組を見せたワークスペース

34年ぶりに現れた小屋組を見せた男心くすぐるワークスペース。梁にはハンモックが掛けられました。

 

改装の打合せはとても盛り上がりました。なにせデザイン関係の仕事を生業としているお客様なので、やってみたいアイディアはどんどん溢れ出てきます。元々のアイディアは出来る限り天井は抜いて、大きな空間を作りたいというものでした。そして装飾関係にも興味津々で、昭和54年に建てられたこの家は、豪華さを感じさせる階段と一体となった玄関の吹き抜けが作られていました。この吹き抜けを装飾でアレンジしてみたいというものでした。

 

こうしたアイディアをもとに施工を担当していただいた石田組さんが建材やパーツを紹介し、私もこれまでに見たことのある事例などを話しつつ、あれこれとイメージを膨らませていきます。各々の好みが複雑につながり合って話は脱線の嵐でした。結果的には装飾や大胆に天井を抜きまくる計画は今回の改装では見送られましたが、こうした会話から計画の軸が出来上がっていきました。

 

物件探しの頃からずっと変わらずにあるコンセプトは「必要なことは必要な時に考える」「家にお金をかけ過ぎない」こと。いくら打合せが盛り上がっても、このコンセプトを大切にすることで、自分たちで出来そうなことは自分でやる。後で出来ることは今やらない。という道筋ができたのだと思います。

 

結果的に今回の改装では主に1階部分の改装という内容でまとまりました。しかし、この1階部分に隠れた魅力がありました。それは事前の現地調査の段階から気が付いていたことでした。この建物の1階和室部分には2階に部屋がありません。しかし、外から見るとまるで2階があるような高さになっているのです。

 

つまり、この和室は天井の裏には小屋組みが隠れた空間になっているのではないかという予想がありました。とは言え、物件を自分の物にするまでは、和室の天井を剥がすわけにはいかないので、打合せでは天井を抜いてカッコ良かったら、小屋組みを見せようということになっていました。

 

これが吉と出たのです。天井を抜いてみると何ともきれいな小屋組みが現れました。建築されてから34年ぶりに公開された小屋組み。あなたの出番が来ましたよ。このたくましい小屋組みと、リビングの天井も抜いて2階の床の構造体を見せた計画が無事に進められていきました。

 

この小屋組みが見える旧和室部分はリビングと一体になり、お客様の希望通り現在はご主人様のワークスペースとなっています。さらに梁を利用してハンモックが掛けれ、友人のお子様たちに大変な人気を博しているそうです。

 

また一方で、建物には一部に弱っている部分が見つかりました。ここには構造用の壁を加えて建物全体のバランスを良くしたり、金物を追加して部材の接合部を補強したり、石田組さんを中心に職人さんたちとの協力で大幅な計画変更なく工事を進めていただきました。

 

こうした部分は床や壁、天井などを解体してみて初めて分かるため、最もドキドキする部分です。状態によっては予定していた計画を変更せざるを得ないケースもあるため、今回はホッとしました。

 

全体的な仕上げについては、床や壁は渋めでザックリとした質感のものを使い、構造体や照明、スイッチパネルなどでアレンジした空間としました。壁は一部お客様が自分で塗装するため、下地を作るところまでで引き渡すという計画でした。天井を抜いた部分がきれいだったので、一層これらの素材が際立つ木造らしい空間になったと思います。

 

こうして石田組さんによる工事は無事に完成。そして引渡し。でも今回の改装計画はここで終わりではありません。お客様による工事があるのです。まずは住む前に最低限やっておきたい、壁の塗装です。石田組さんもサポート体制を整えてくれて、お客様のご家族たちによって仕上げられました。

 

この他にもやりたいことはたくさんあります。表札はお客様のこだわりで海外発注で作られ、完成度の高いプロダクトとなって飾られ、この表札のすぐそばにあるR不動産toolboxから採用いただいた船舶照明や室内のトグルスイッチなどとも相性のよいものになっています。

 

これからやりたいことはワークスペースの棚造作やカーテンの設置、テレビをやめて壁掛けのプロジェクター計画、キッチンの交換、家具の製作、その前に2階の荷物の整理などなど…。やりたいことはまだまだ盛りだくさんです。

 

そんな中、急遽優先順位が上がったのは庭にある梅の木。売主さんがきっと丁寧に育ててくれたいたのでしょう。たくさんの実がなり、親類家族総出で収穫祭が開かれ、梅酒や梅干し、ジャム作りが他の工事の予定を繰り上げて行われたりして。

 

こんなふうにして、時には家族や友達を呼んでみたり、仲間と一緒にモノ作りをしてみたりと徐々に自分たちらしくやっていくのが、等身大の鎌倉育ちの家づくりなんだと思いました。

 

(完)

 

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